約 3,882,687 件
https://w.atwiki.jp/hatuyukiusagi/pages/45.html
もしかして、もしかしなくてほぼ100%刹那一瞬 幹部になりたい厨二病患者。個別のページもある。刹那一瞬
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/3585.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 第3部 第03話 第一章(3) 9月3日(木) 午後4時 私は校門で当麻を待つ。アンチスキル掃討も昨日で終り、今日は一人で待つ。 厳しい残暑の中、校門で白のスーツとタイトミニ姿はひときわ目立つのだろうか じろじろ帰宅部の学ランの学生や、セーラ服の女学生が私の顔をじろじろ 見る。婚約式で私に会った女学生は、ため息をつくのを見るたびに、上条 当麻というフラグ男の威力を思い知らされる。 やがて、話を聞きつけてきたのか、人だかりができ始め、居心地が悪い。 正直、あまり居心地のよいものではない。私はそれなりに有名人だし、婚約式でここの 学生に顔は知れ渡っているので、挨拶やら、はては握手をもとめる人までいて変な気分 になる。 (はやくこないかな、でも下校デートはやめた方がいいかもね) 時間どおり当麻が現れ、私はほっと胸をなでおろす。 私は、スマートフォンで呼んだタクシーの到着を確認し、当麻を誘導する。 「じゃ、当麻乗って」 「ああ」 私は当麻の手を取り、タクシーに乗る。 あらかじめ連絡済みのジャジメント本部へ向かう。 「当麻、お疲れ様」 「美琴、お疲れ。昨日は長かったな」 「ふふ。。当麻・・説教は5分でいいわよ」 「悪い。結局美琴を午前2時まで拘束してしまったな、ごめん」 「で昨日でスキルアウトの掃討作戦終わりだな?」 「ええ幹部は全員拘束したしね、街でふらついているだけで逮捕はしないわよ。 ちゃんとレイプや強盗のような刑事訴追できるやつだけよ」 「結局何人拘束した?」 「今時点で1033名。」 「いまごろ黄泉川先生はてんてこまいだろうな。昨晩は徹夜だって嘆いていたよ」 「今日は寿司でも差し入れしましょう。私が残業させたようなもんだし」 「で、今日からはどうする?」 「暗部の整理よ」 「暗部?」 「学園都市の暗殺部隊よ」 「はあ?そんなのあるのか?」 「学園都市が表ざたにできない事件を闇から闇に処分する組織てとこかな」 「そうか・・で、整理て?」 「簡単に言えば、アレイスターの代わりに首の宣告をする係よ」 「それは厄介だな」 「ええ。普通の人では殺されるかもね。かれらは身命をもって学園都市へ尽くして きた。自負もプライドもある。 その人たちのリストラは簡単ではないわ。」 「で。。それをアレイスターが美琴に押し付けてきたと?」 「ええそのとおりよ」 「損な仕事だな。」 「つらいわね。・・まあ仕事だからしょうがないんじゃないかな。 ピンチはチャンスともいうしね。一応こちらが立場が上だし」 「美琴はポジティブだな」 「そうでもなきゃ、首切り役なんてできないわ。私の先輩達の 首切りだし」 私はため息をつきながら、当麻へ気の進まない話を続ける。 当麻は、ひとつ基本的な疑問に気がつき質問をはじめる。 「ところでなんで暗部をアレイスターは解雇するんだ?」 「それは・・理由があるわ。対魔術式駆動鎧とAI装備のファイブーオーバーの 完成よ。それは高位能力者の存在意義を奪いつある」 「ようは能力者を上回る兵器の開発か・・でもさ両方、美琴がらみの案件じゃない」 「そのとおりよ。ある意味私の研究が暗部の居場所を奪った。 高位能力者の存在意義を奪った。といえるかな。彼らに恨まれて当然よね。 その私に暗部のリストラ役をさせる。アレイスターは食えないわね」 「で誰の首を切るんだ?」 「レベル5の第3位垣根帝督率いるスクール、第4位麦野沈利率いるアイテム」 「結構ハードだな」 「まあ気楽にしましょ。最悪ぶん殴るだけだし」 「で、今日はどうする?」 「垣根さんへ不都合な真実の告知、首切り宣告よ。」 「それは、胃が痛いな」 「明日は我が身かもね。悪いけど、付き合ってくれる? か弱い女は 一人では耐えきれないわ・・」 「はあ・・か弱い女ね・・で具体的にはどうする?」 「垣根さんを面談するわよ」 「ジャッジメント本部でね」 ジャッジメント本部 副委員長室 午後5時 私と当麻は、新調された副委員長室で、垣根帝督を待つ。 さほど広くはないが、やや大きめのキャビネと、一通りのOA機器は揃え、それなりの 執務室らしい風情はある。 私は応接キャビネで、当麻と垣根帝督の話をする。 「未元物質ね・・」 「既存物質以外のモノを能力で作る能力者と言うことになるわね」 「メルヘンだな」 「当麻て結構詩人ね。・・でも防御性には優れる能力ではあるわね。 そろそろ時間よ、あとは打ち合わせ通りね」 垣根がノックもしないで入室する。長身痩躯、わりにイケメンな。。 でも少しホストのような男は不機嫌さを隠さない。 (まあ・・無理もないか・・年端もいかない若造にいきなり電話で呼び出されて、気分が いいわけもない) 私は、失礼な社会儀礼を知らない男に常盤台スマイルで丁寧に対応する。 「垣根帝督さんですね、着席ください」 垣根帝督は不機嫌さを隠そうともしない。 私は、大人げない先輩の無礼はあえて無視し話を続ける。 当麻は、なにかいいたげにしているがそれも無視する、 「早速ですが、用件を申しあげます。「日本時間 9月5日 午前0時から 統括理事会 直轄組織 スクールとの業務委託契約を解除致します。」以上は統括理事長 アレイスターの言葉であり、それを学園都市1位の御坂美琴が代読します。」 「はあ?契約破棄?俺たちは統括理事会直轄だぞ」 「残念ですが、統括理事長の決定事項です。なお統括理事長から今までの垣根さんの功績に 対して、褒賞金を支給するという言葉も預かっています。」 「はあ?だけど俺らの代わりは?」 「小職が主導する風紀委員会組織犯罪対策特別部が対応しますのでご心配なく、それと 垣根さんの奨学金は現状維持です。」 「は~あ なるほど。テメエがアレイスターに取り入ったわけか」 「ピンセット」 「素粒子工学研究所、アンダーライン」 「てめえ・・なんでそれを知っている?」 「貴方が何を企んでいるかを統括理事長が知らないとでも思っていましたか」 「てめえ・・ここで殺して」 垣根は殺気を全身にみなぎらせ、私を威嚇する。 (馬鹿ね・・せっかくこっちがちゃんと配慮しているのね。でも・・これで 彼を失脚させる材料ができた) 「落ち着いてください。ここでの会話はすべて録音・録画されていますけど」 「くそたっれ」 バチ・・ 垣根が頭を抱えてもがきはじめる。 うが・・苦しい・・ 垣根は口から泡をはき、見るからに苦しいそうだ。 能力者の演算をキャパシティダウンが効果的に妨害する。音波を反射できる、私と 一方通行以外には効果てきめんなそれが垣根の脳を狂わさる。 「くそ・・てめえ何をした?」 垣根が私の奇襲に対して恨みがましい口調でにらむが私は無視する。私はわざとらしく 顔を取り澄まし、少々きつい口調で無礼を指摘する。 これでも私の方が序列は上なのだ、その力関係をはっきりさせる。 組織では上司は部下に舐められるのは致命傷なのだから。 「キャパシティダウンを稼働させました。少し静かにしてください」 「垣根さん、私は若輩ですが、統括理事長の代理人なんですよ。 最低限の社会的な儀礼は守ってください」 「てめえ・・」 「あんまり常識がないと、制裁しますよ。」 私は、生体電流を操作し、表情を隠す。 「てめえみたいな甘ちゃんに人を殺せるのか?」 「議論にもならないですね。しょうがありません。少し・・」 私は、頭の上に膨大なエネルギーを蓄え、威嚇を始める。青紫に輝く光球が輻射圧を与えるほど。光球はプラズマになり、さらに強大な磁場により1点に集約され、マイクロメートル単位の極小の物体へ変わる。 「マイクロ超荷電粒子砲、試作品を受けてもらいましょうか・・ 厚さ1万キロの鉄板くらいなら簡単に貫通するのよ」 水爆を遙かに上回る、莫大なエネルギーが1点に集約され、地球の裏側にさえ貫通できる ほどの貫通力の「モノ」が形成される。E=MC2 まさに自然界のあらゆる力と素粒子が、混然 一体状態であった、始原(ビックバン直後)を再現する質量とエネルギーの区別さえない、 究極の状態0の特異点を形成する。超荷電粒子砲の究極の進化形の最強のビーム兵器 「さて・・これを垣根さんの脳に移したら何が起きるでしょうか?」 垣根の顔色が変わる。垣根が超能力者だからわかる。太刀打ちできない本当の暴力、あらがいようもない莫大な力。 「垣根さん、やっといい表情になりましたね。じゃまじめな話をしましょう」 私は、マイクロ超荷電粒子砲の砲弾を口から飲み込む。 その様子を垣根が唖然とした顔で見る。あれほどの莫大なエネルギーを飲み込む 得体のしれない光景に垣根が恐怖を覚えたのだろうか、がたがた震えだす。 「どうかなさいましたか?」 私は、レベル5のくせに意外に小心な垣根にいささかの憐憫を覚えながら、表情 だけは柔和に作り変え、冷静な顔で凝視する。 垣根は言葉使いを変え、女王へ拝謁する家臣のように、下手に出る。 「御坂・・さんは何を望んでいるのでしょうか?」 結標が影から現れる。 「垣根さんは、統括理事長との交渉権を獲得したいという話でしたよね」 「え・・はいそうです」 「垣根さんに交渉権獲得のチャンスをあげましょう。」 私は打ち合わせどおり、当麻に話をふる。 「当麻悪いけど、垣根さんに現実を教えてくれない?不都合な真実をね」 「ああ、わかった」 「ほどほどにね」 私は結標に指示を出す。 「垣根さんと当麻を地下室へ転送して」 「オイ・・御坂さん、俺をどうする気だ・・」 「当麻に聞いてください。当麻、垣根さんを頼んだわよ」 地下室 「は~あ。御坂美琴は案内人結標まで配下にしたか。でようは上条・・お前をぶちのめせば 交渉権を獲得できると・・そういう話だな」 「さすがに頭は回るな。」 「で、・・レベルはいくつだ?」 「0・・だが」 「ははは・・ただのレベル0なわけねえだろう。幻想殺しの上条当麻、御坂美琴 の婚約者」 「俺も有名人になったな・・。美琴の婚約者はこんなに有名なんだな」 俺は、学園都市を代表するとんでもないセレブと婚約した事実に気が付かされる。 (美琴がいつも有名税の重さを嘆いていた意味を思い知らされる。) 垣根は、美琴に失禁させられた悪夢を忘れ、目の前の与しやすそうな相手に のみ注力する。自分達の会話を全部美琴が聞いて心象を悪くしている事実に気 が付かない、気に留めないところが彼の小物ぶりを示している。 「じゃ・・ちんたらしてもしょうがね・・お前に恨みはないが、俺の未来のために 死んでくれ、上条当麻」 垣根は、未元物質で形成した羽を広げ、その雄姿を誇示する。 演算で再現された、まるでルキフェルのような・・まがまがしいそれ 「この壁はどうやら、窓のないビルと同じ素材のようだから少々乱暴しても壊れは しねえだろう」 「わかっているならさっさと攻撃しな、未元物質さん」 垣根は6枚の羽根で上条に襲い掛かる。 が、上条当麻の右手は、わずか1秒足らずのうちに直線的な動きで襲い掛かる羽を すべて破壊する。 そして、垣根が唖然としているうちに、羽を失い態勢を崩した垣根を右アッパーで 吹っ飛ばす。垣根は数メートル吹っ飛ばされ、口から血を吐く。 「てめえ・・」 さらに、当麻は倒れ掛かった垣根にもう一発くらわせる。 垣根は、当麻の腰の入った攻撃で地を這う。 はあ・・はあ・・ 「さすがに、幻想殺しだな・・だがな 羽は飾りなんだよ・・別に羽がなくてもな・・」 垣根は痛みで上手く起動しない頭脳を精一杯動かし、未元物質で大気の組成を変え、揮発 ガスに変える。正体不明の爆風が、巻き起こり、当麻をぶっ飛ばす。 が、当麻は爆風をしっかりと右手でガードし、傷一つ負わない。 「はあ・・美琴に比べればずいぶん遅い攻撃だな。それだけか・・?お前の駒は、つまんねえなあ」 垣根は、想像以上に上条当麻が戦いなれていることに驚きを隠せない。 (このままでは、こいつに殴られて終わりだ。しょうがねえ・・ここは地下室だ、窒素を酸素 と急速に反応する組成へ変えて、窒息死させるか・・) (上条・・あばよ・・俺も仲間と生活が懸かっているんだ許せよ) だが・・垣根の演算は間に合わない。 垣根の脳内で美琴の「卑怯者」という大音声が響き、演算が一瞬阻止され、そのわずかな隙をついて上条の突進が、垣根の思惑を吹っ飛ばす。垣根は当麻に完全に意識を刈られ、崩れ 落ちる。 「美琴終わったぞ・・いるんだろう」 「今日こそはバレないと思ったのに」 「美琴。。まだまだだな」 私は当麻の左手をとり、すこしいたずらっ子のような顔をする。 「当麻もまだまだ甘いわね、アンタは高位能力者に左手握られたらおしまいなのよ」 当麻は少しおどけて、私がそんなことなんてするわけない事をわかりつつ、けん制の 一言を発する。 「電撃は勘弁な」 「しないわよ。でもさ垣根はそんなことしなかったの?」 「正直、こんなに素早く左手を握るのは美琴だけだ」 「へへ、まあ当麻のクセは全部しっているもんね・・」 「美琴は本当可愛いな。で締めな」 「説教は短めにね。さっさと帰りたいから」 「ああわかった・・」 副委員長室 午後7時 「起きたか垣根」 「上条か・・御坂美琴は?」 「会議中だよ」 俺は別室でモニター越しに固唾の飲んで見守っている美琴を思い出しつつ嘘を言う。 「そうか・・」 俺は意識して少し表情を厳しくする。 「垣根・・、美琴は、お前を尊敬していたぞ。アレイスターにこき使われて、学園都市 を影で支えていた」 「だが・・なんだお前のふてくされた態度は」 「褒賞金や、待遇をアレイスターに掛け合って、しかも過去のお前たちの過去の過ちの 免責まで勝ち取ったんだ。美琴はな・・。だけどあんな態度じゃ・・美琴だって ブチ切れる」 垣根は、蕭然と今まで自分が築いたものがぶち壊された、空白感に包まれる。 「上条、御坂さんが、俺たちのために骨折っていたのは分かってはいたよ」 「だけど、・・いきなりお前首と言われて冷静な奴がいるか?」 「とはいえ、お前の言うととおりもう少し冷静に、御坂さんの立場も考えるべきだったな」 「契約解除の件、了解したと御坂さんへ伝えてくれ」 「美琴が垣根と一緒に仕事をしたいと言っていたが」 「いや・・いい。御坂さんも俺が一緒じゃ迷惑だろう」 「そうか・・頑張れよ」 「ああ」 憑き物がとれた垣根は、入室してきた美琴に軽く会釈をし、「ありがとう上条」 と言って退出する。 自宅マンション 20時 「当麻ありがとう」 「俺は大したことはしていないよ。」 いちばんの山を越え、安心しきった美琴が左手を握ってくる。 私が注文したデリバリー寿しが食卓を彩る。 「じゃ食べよ、今頃同じものを、部員とアンチスキルの皆さんへ差し入れしたわよ」 「いただきます」 「いただきます」 30分ほどして、握り20貫と太巻き3本を食べ終え、蛤の澄まし汁を飲み終え 腹が膨れる。 「さすがに寿司はうまいな」 「本当ね」 玄関に食器をおき、リビングへ戻る。 2人で、密着して座り、お互いの体温を確かめ会う。 もう臥所では夜も一緒の中だが、こうやってソファで2人で密着している時間も心が 暖かくなる。 「垣根はどうなるんだろうな」 「難しい質問だけど、それは垣根さんしだいね」 「そうだな・・。でもさ褒賞金という名の退職金も出るんだろう。奨学金も現状維持なら 別に困る話はないな」 「人間はそう簡単に割りきれないわ。でも挫折はいつかは乗り越えなければならない。」 「美琴は挫折なんてしたこと・・」 私は苦笑いを浮かべる 「当麻・・私は元々は才能のかけらもないレベル1よ・・挫折の連続だったわ。強者に 何度も、完敗し、なんども無力さに打ちひしがれ、何度悔し涙を流したことか」 「悪りい・・そうだったな。お前は底辺からのし上がったんだったな」 「いいのよ。でも・・不遜とか傲慢とかそう見えるのかな。・・ちょっと自己嫌悪になるわ」 俺は美琴の太ももに手を沿わせる、美琴は太ももを触られるのをことの他喜ぶ。 美琴の、憂鬱そうな顔が、明るい眩い光を放ち始める。 「言いたい奴には言わせておけばいい。だけど美琴は多くのファンがいるだろう俺も その一人だ」 「ありがとう。当麻嬉しいわよ。ちょっと垣根さんの件で感傷的だったかも」 「じゃ・・風呂に入ろうか」 「今日は洗いっこしようか?」 「いつにもなく甘えるな」 「へへもっと甘えていい?」 「これ以上甘えられては上条さんの理性が崩壊しそうです」 「いいわよ。夜は崩壊して。私はどんな当麻もいいわよ」 「じゃ・・風呂に入りましょ」 ふろ場からは、きゃきゃきゃきゃ盛りのついた小動物のような矯声が響く。 しばらくして、私と当麻は風呂から上がる。 「まったく美琴は甘えん坊だな、美琴のファンに見せたら俺が殺されそうだ」 「いいのよ、当麻は婚約者なんだから。私はもっと甘えたいな」 「まったく・・ぎゃぷ萌えか・・普段は凛々しく強い勝気な女がこんなにふにゃふにゃに なってさ」 「へへいいもん。だけど、当麻だってさ・・」 へへ・・まったくにこんなに膨らませてさ・・ 「いや・・それは・・」 「じゃそろそろ寝ようか」 「ああ」 「でも説教と違ってこれはちゃんと時間かけてね」 「え・・」 「5分はだめよ。」 「善処いたします」 問題はまだまだ解決していない。学園都市の闇はごく一部が解決しただけだ、でも 当麻と一緒ならなんとかなる。そんな気がした。 続く 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン)
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2451.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人の旅行物語 まどろっこしく感じてたはずの3日間はあっという間に過ぎていった。まさに光陰矢のごとし。 その原因はもちろん御坂。彼女のことを考えるだけで、体感時間が速くなる。 「やっぱ分かんねえな」 上条はベッドに仰向けにダイブしながら呟く。確かに御坂は他奴らとは違うのだろう。 そこまでは理解できている。だけどそれだけでは何か足りないのだ。何かが… 「ーさん」 うーん 「ーjーさん」 うーん 「ーじょうさん」 うーん 「上条さん!」 「は、はい!ごめんなさい!」 条件反射でつい謝ってしまう。 インデックスが残した負の遺産だ。 「あ、いえ。こちらこそ大声を出してしまってすみません」 「ん?その声は五和か?」 「はい、そうです。おしぼり作戦から進化した五和です!お久しぶりです、上条さん!」 「?ああ。ところで来ているのは五和だけ?」 「はい、すみません。他の人達は忙しいらしく」 「そうか。悪いな、無理を言って…」 上条は知らない。実はこれが二人きりにするための作戦であることを。 実は建宮達がこの会話をこっそり盗聴していることを。 ちなみに当の五和も気づいてはいなかった。 「ところでどうやって行くんだ?」 「はい。これを使います。」 「これってバイク?」 「はい♪上条さんは後ろに座ってください。」 「普通は逆だよな…情けない」 「いえいえ。そんなことありませんよ」 「ううぅ…どんぐらいで着くんだ?」 「えっと…15時間前後といったところでしょうか」 「そうか。頼むぞ、五和」キリッ 「は、ははは、はい////」 1級フラグ建築士の名は伊達じゃない。さすがやでー イタリアとフランスの国境付近ー 「なんか慌ただしいな。なんかあったのか」 「詳しいことは分からないんですけど、なんでもどこからかエッフェル塔の爆破予告が出ているとか…」 そうだった!御坂のことで頭がいっぱいで、完全に忘れていたけどそれが本題だった。 「そういえば上条さんはなぜここに…?」 「ああ、それはだな…」 五和に全てを話した。今の俺にはこれしかできないから… 「つまり上条さんはその御坂さんという方を助けるためにパリに向かっているということですか?」 「まぁ、そうなるな」 「助け出せると良いですね」 俺はただ黙って頷いた。 眼前に広がる巨大なオブジェ。ついにエッフェル塔にたどり着いたのだ。 その巨大な塔の足元にはいくつものパトカーが停まっていて、野次馬なのか、人がうじゃうじゃいた。 当然の光景と言えよう。これだけのことがあってなんの対策も取らない方がおかしいのだ。 それが有効であるかどうかは別として。 「くそっ!どうにかして中に入るとするか。五和、ここまでで良いぞ。ありがとな」 「待ってください!私も行きます。上条さんの役に立ちたいんです!」 「確かに今までは足手まといだったかもしれません。左方のテッラのときも後方のアックアの時も…」 「そんなことはない。五和のおかげでテッラのトリックにも気づくことができた。アックアにボコボコにされた時、治療してくれたのは五和だっただろ」 「上条さん!私はあなたのことが好きなんです!好きな人を守りたいと思うのはいけないことなんですか!?」 好き?五和が?俺を?はっきり言って悪い気はしない。 当然だ。女の子から告白されて喜ばない男子などごく少数だろう。 普通は飛び上がるほど嬉しいはずだ。 はずだが…上条は何も言えなかった。 (なんで俺嬉しくないんだ?) 刹那、御坂の顔が思い浮かばれてきた。 (なんで御坂が?アイツは関係ないだろ…?) と、その時今までの記憶がフラッシュバックしていく。 (てめぇはそいつを守るべき対象としか見てねえのかって聞いてんだ) (美琴センセーが上条君を元気にしてあげよう) (アンタと私は同じ道を進んでいる。その事を忘れんじゃないわよ) (ただし今度は一人じゃない) ・ ・ ・ ・ あぁ…そうか。 なんだ。簡単なことだったんじゃないか。 「五和、悪いな。俺、お前とは付き合えない。」 「好きな人がいるんだ。気づいたのは今なんだけどな」 「謝らないで下さいよ。上条さんは何も悪くないんですから…」 「それと、ありがとうございました!私のことちゃんと振ってくれて。上条さんのこと好きでいさせてくれて」 「私、なんとなく気づいてたんです。上条さんはその方が好きなんだなーって」 「…」 「上条さん、行ってあげてください。彼女のもとへ」 「え?でも五和は…」 「私は平気です。すぐにまたいつもの元気な五和に戻りますから!」 「ごめんな五和…行ってくる!」ダッ 「お幸せにー!」 もう時間がない。五和のためにも絶対間に合ってみせる! 待ってろよ御坂…もう手を伸ばせば届く距離にいるんだ。 だからもう少しだけ我慢してくれ! 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人の旅行物語
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/935.html
第2章 破滅への使者 Heimdall 1 ドドドドドガガガキキキキキキ!!と、建物に銃声と弾丸が壁を抉る音が木霊する。 第十七学区のとある廃工場で銃撃戦が行われていた。 その銃撃の中心にいる男は服部半蔵。『スキルアウト』のリーダーだ。もっとも、その肩書きは代理でしかなく、現在はある男の復帰を待っている。 半蔵は先月、郭という少女から『原石』のリストと思われるレポートを奪取している。普通であれば気にも留めない事なのだが、仲間である郭が関わっているという事でどうにも放っておけない状況になっていた。 この一ヶ月、色々と情報収集をしたが目ぼしい成果を挙げる事ができず、苦肉の策として学園都市に「『原石』の在り処を知っている」という旨の手紙を送りつけカマをかけてみたのだ。 (やっぱり学園都市の連中が画策してやがったか。おおよそ見当はついていたが、これで確定だな。とりあえず今はこの状況を脱する事だが―――) カンッ、と空き缶を投げたような音がしてハッとして横を見る。そこには拳大の手榴弾があり、 (やべっ!!) ドゴォ!!という爆発音と共に半蔵の思考が吹き飛ぶ。だが半蔵の動きは止まらない。爆発の瞬間、とっさに近くにあった風力発電のプロペラの支柱に隠れ難を逃れていた。 しかし追撃は続く。 今度は風力発電のプロペラと水道管のパイプがひとりでに動きだし、半蔵に目がけて猛スピードで向かってくる。 (念動力!?奴ら、能力者までいるのかよ!!?) 半蔵はギョっとするが、考えている暇はない。銃撃だけでも手いっぱいなのに、能力まで交えられたらとてもではないが交わしきれない。 半蔵の獲物は自身で改良を加えた三点バーストと打ち根の二つ。 射程の短い打ち根は論外。三点バーストも換えの弾を入れても十数発。しかも、ただでさえ照準の難しい三点バーストを走りながら扱うというのは半蔵には厳しい。撃ち合うという選択肢はなかった。 (とにかく逃げるしかねえ。幸いここは工場だ。遮蔽物に隠れて奴らの視界から消える事ができればそれでいい) 半蔵は忍者の末裔である。元来、物陰に隠れ敵を一撃必殺で仕留めるのが彼らのセオリーである為、こういった逃亡で敵を撒くのもまた彼の領分であった。 (―――!こいつら!!) しかし追っ手は半蔵を正確に追跡してくる。いくら閉鎖された工場とは言っても今は昼だ。所々に差し込んだ光が彼の影を生み出してしまう。それでも半蔵はその独特の移動法で影すらも利用し追っ手を幻惑しているのだが、効果は芳しくない。 (間違いない。あの装備といい、能力者といい、何よりこの動き。全てが『警備員』や『風紀委員』とは違う!) バッキイィィ!!!という爆音と共に念動力で高速回転していたプロペラが工場の支柱にぶつかり大破した。その破片のいくつかが半蔵に当たり、額からは血が流れてくる。一瞬怯んだが、それでも半蔵は走り続ける。 (くそっ!このままじゃジリ貧だ。何とか突破口を見つけないと蜂の巣だ…!) 半蔵は左へと視線を向ける。 この廃工場には地下室がある。もっとも、その地下室は元々あったわけではなく、彼ら『スキルアウト』が緊急時に隠れる為の空間だった。 おそらく学園都市の追っ手の連中はこの地下室の存在を知らない。そこに逃げ込めば簡単に敵を撒く事ができるが、こうも正確に追跡されると地下室には逃げ込めない。今の状況で逃げ込めば確実に袋小路だ。 (何か注意を引けるものがあればいいんだが…) 半蔵はあたりはぐるっと見渡す。巨大クレーンにベルトコンベアー、変圧器と完成品を運ぶ為の大型トラックが放置されている。 (どれもこれも…使えねえ!!) 半蔵は歯噛みする。次第に焦燥感が出てくる。そしてその焦りは一つのミスを誘った。 行き止まり。 平凡なミスだった。工場の地形は頭に入っていたが、予想外の追撃などで冷静さを失っていた半蔵は逃走ルートを間違えてしまっていた。 (ちっ!情けねえ!) 逃げ場を失った半蔵を十人弱の追っ手が包囲する。ある者は銃を、ある者は刃物を、ある物は能力使用の為か独特の構えをしている者もいる。 逃げられないと悟った半蔵は覚悟を決めたのか、狙いの定まらない三点バーストの引き金に指をかけ銃を構えようとした。その時―――。 『半蔵様!右へ!!』 どこからか、いきなり叫び声が聞こえた。 半蔵はわけもわからず反射的に右へ飛ぶ。 すると半蔵が飛んだ先の床がサッと、まるで襖を開けたように開いた。 「は?」 あまりにもお約束的な事態に、状況に合わぬ間抜けな声を出してしまう。しかし、気付いた時には半蔵はその穴に落下を始めていた。 「あああああああああああああああああああああ!!!????」 思いっきり落とし穴に落ちていく半蔵。落下中に穴が閉じていくのを確認すると後はもう暗闇を落ち続けるだけだった。 2 「え、えぇ…っと…」 とある一室。少女の困惑した声が響いていた。 とりあえず中に入れば?という土御門の言葉で上条宅にお邪魔した五和。 土御門がいたのも充分驚きだったのだが、何より綺麗な黒髪の少女の存在が彼女の思考の全てを支配していた。 (あの人誰なんでしょう?見たところ日本人のようですけど…。制服を着ているところを見ると上条さんのご学友といったところなんでしょうか…) 頭の中で現在分かっている状況から推理する五和。ハタから見ればリビングでボーっと立ち尽くしているようにしか見えない。 「そこ。とりあえず座るといい」 すると、そんな五和を見かねた姫神はどこから出したのか、座布団を一枚持ってくるとそこに座るように促す。 「あ、ありがとうございます!」 申し訳無さそうにいそいそと座る五和。この時点では五和が一方的に空回りし、姫神が冷静に歩を進めているという感じだ。 彼女達のやりとりが一段落したのを確認すると今度は土御門が口を開く。 「で、いきなりカミやん家に押しかけてどうしたんだにゃー?」 土御門は敢えて五和の名を言わなかった。それはこの状況を考えて彼が判断した事なのだが、 「あぁ、その件ですね。実はイギリス清きょ―――」 「思い出したぜい。借りてたDVDを返しにきたんだにゃー」 土御門は状況が全くわかっていなかった天然少女の言葉を遮る。 この場には姫神秋沙がいる。彼女は間接的ではあるが、一応イギリス清教の保護を受けている形になっている。しかし彼女は魔術師ではない。普通の人間は魔術世界に首を突っ込むべきではないのだ。 この状況でイギリス清教とか『必要悪の教会』とか言えば姫神に余計な詮索をされる可能性も有り得る。土御門はもう二度と姫神に魔術世界に足を踏み入れないで欲しかった。 そんな土御門の想いを知る由もない五和は何が何だかわからない事態に?マークを作っている。 「(とりあえず、この場でその話はまずいにゃー。姫神がいなくなるまでその話はストップだぜい)」 「(はぁ…。わかりました)」 土御門は小声で最低限の説明をすると、五和は「彼女は姫神さんと言うのか…」と何やら頷いている。 姫神はコソコソしている二人を不審に思ったが、特に問い詰めたりはしなかった。 そんなこんなで、ひとまずの静寂が訪れる。が――、 ピリリリリリ!、とデフォルト設定の携帯電話の着信音がその静寂を切り裂く。 姫神はその着信音が自分の携帯だとわかると、二つ折りの携帯電話を開きディスプレイを見る。一瞬、ほんの一瞬姫神の動きが止まったがすぐに通話ボタンを押した。 『姫神か?悪いんだけど今から下の公園に来てくれ』 その声は聞き慣れた声なのにどこか緊張を誘う。だが心地良い不思議な声。 「わかった」 姫神は一言だけ返すと電話は切れてしまう。時間にしてほんの数秒。にも関わらず得体の知れない疲労感が姫神を襲う。しかし悪くない感覚だ。 「ごめん。ちょっと出なきゃいけない」 姫神はそう言うと立ち上がる。 土御門が「留守は任せるにゃー」と敬礼のジャスチャーすると姫神は早歩きで部屋から出て行った。 「カミやんもいいタイミングだぜい」 「え?」 「いや、何でもないにゃー」 やっぱり何もわかっていない五和。しかしそんな五和を無視し、土御門はトーンを下げた声で話を切り出す。 「何があった?」 五和は土御門の低い声が「ここからは魔術師の会話だ」という意図を汲み取ると表情を引き締める。 「はい。実は―――」 3 ツンツン頭の少年はとある公園のベンチに座っていた。 今日は授業が休みで一端覧祭の準備も吹寄から逃げ切り、白シスターは「学園祭って言えばわたあめなんだよね!そんなわけでこもえの所に行ってくるー!」と三毛猫を連れて行ってしまった。 そんなこんなで晴れてプチ秋休みが出来たので姫神への埋め合わせと思い、彼女を誘ったのだが…。 「あー…なんだってこんな事になってるんだよ…」 少年の隣にはある少女がいる。茶髪を花柄のヘアピンで留めた少女。常盤台中学のエース・御坂美琴だ。 上条がジュースを買おうと自販機に向かったら例によってバッタリと会い、例によって美琴の逆鱗に触れ電撃を食らう…という顛末があったばかりだ。 「つーか、お前…学校はどうしたんだよ?」 「今日は自主休日!」 「なんだそりゃ…さっきの自販機の事といいお前不良少女の道まっしぐらじゃねえか。一時は改善の兆しがあったのに」 美琴は何やら変に不機嫌なのだが上条にはその理由がわからない。 「そんな事より…さっき電話で誰呼んだの?」 「あ?クラスメイトだよ。今日は元々そいつと約束してたわけだからな」 「……………」 美琴はしばし考える。 こいつのクラスメイトってほとんど女しかいない気がする。確か男で変なのが2名ほどいたような気がするけど、今日の相手は絶対そいつらじゃない。 全く根拠のない話なのだが、美琴の女としての本能がそう言っている。 「そういうわけだからさ。今日はお前に構ってる時間がないんだけど―――」 「女ね」 「は?」 美琴は矢を射るように上条の言葉を遮り、上条はそんな美琴の言葉に固まってしまう。 「女なのね?」 「えっと…」 「正直に言いなさい。お姉さん怒らないから」 「絶対怒る!てゆうかもう怒ってる!!何そのバチバチ!!てゆーかそもそもお前年下じゃ―――」 「また女かああああああああああ!!!!!!!!!」 「あーーーー!!?ミコトさんがキレたーーー!!最近ちょっと優しかったのにーーー!!!!」 「お・ま・え・の・せ・い・だっ・つー・の!!!」 電撃使いの少女は久しぶりにフルパワーで少年を撃った。 何やら右手で防ぎきれなかった電撃が体に回ったのか、上条は倒れてピクピクしているが「天罰よ!」とキツイ一言を投げて美琴は学校へ向かっていった。 その後、姫神が上条との待ち合わせ場所に着いた時には「不幸だ…」といううわ言を言いながら地面に転がっている高校生がいたとかいないとか。 4 駅のホームの隅にあるベンチに1人の男が座っていた。 別に電車に乗るためではない。彼は人混みを避ける必要があった。 (やはりな…さっきからチョロチョロとしている奴らがいなくなりやがった) 彼は尾行されていた。 雲川と別れ、高校を出た途端、尾行され始めた事に気付いた。 裏路地を選ばなかったのは、一端覧祭の準備をしている学生が近道として何人か通っていたからだ。下手に巻き込んで勝手に死なれても困るし、何より彼の美学に反する。 (あーあ。やっぱこういう馬鹿騒ぎは嫌いだわ) 彼がそんな事を思いながら毒づき天を仰ぐと、ふと横合いから声がかかってきた。 「あの…すみません。垣根帝督さんですか?」 「あん?」 垣根は訝しげに声のした方に視線を向ける。 声の主は男。年齢は16か17だろうか。学生服のボタンを全開にしているが、その風貌は何故か真面目そうにも見える。耳と眉にかかる程度の黒髪はパーマをかけているのか微妙にウェーブしている。 (こいつ…ほとんど気配もなく現れたが…) 垣根は気配を感じさせずに近づいてきたこの男を怪しんだが、それ以上に不可解な点がある。 「なぜ俺の名を知っている?」 垣根は表向きでは死んだはずだ。当然、この世に存在しているはずがないし、そもそも垣根の顔と名前を知る者は『表』の世界にはほとんどいないはずだ。という事は…、 「失礼しました。私、特久池栄光(とくちえいこう)と申します。実はあなたにご用命がありまして―――」 しかし少年の言葉は最後まで続かなかった。 ガンッ、ガンッ、ドンッ!と銃声と小型ミサイルを撃ち込んだような爆音が響いたからだ。 突然の銃撃に、辺りの人間が蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。 「ふん、さっきのネズミどもか。どうやらコソコソと尾け回すのはやめて正面から潰しにかかってきたわけか。上等だ。試運転には丁度いい」 垣根は攻撃を交わしつつ歪な笑顔を見せる。義手になってから戦闘で能力を使った事がなかったので、いいテストになると思っていた。が―― 「待って下さい。こんな所であなたが能力を解放すれば辺り一面が吹き飛んでしまいます。ここは私に任せて下さい」 特久池はあわてて割り込む。 既に吹き飛びかけてるだろ、と垣根は言おうとしたがその声は発せられなかった。 特久池が垣根の肩を掴むと2人はこの場から消え去ってしまったからだ。 垣根と特久池は廃ビルの一室にいた。先ほどの位置から200メートルほど離れている。 「へー、お前『空間移動能力者』だったのか。しかもこの移動性能を考えるとレベル4…限りなくレベル5に近いな」 垣根は感心したのか特久池の能力を評価している。 「…。とりあえずここならしばらくは大丈夫でしょう。あんな所でやり合っては確実に関係ない方まで死んでしまいますからね。垣根さんもそれは本望ではないでしょう?」 その言葉に垣根は適当に頷くと、 「で、お前は何者なんだ?どうして俺を助けた?そもそも何故俺は襲われてんだ?」 特久池は薄笑いを浮かべて答える。 「それなら順を追って話した方がいいでしょうね。なあに、いつも通り『上』の連中がまたロクでもない事をしようとしているんですよ」 5 土御門は険しい表情になっていた。原因は天草式の少女・五和の話だ。 五和の話はこうだ。 ロシアのある魔術結社が、ある特定の条件の下、人間をかき集めている事。 それに伴い、ロシア成教がその魔術結社の殲滅にあたっている事。 それとは別にロシア政府が再び『実験』と呼ばれるものを再開しようとしている事。 これだけでも充分に怪しいのだが、土御門が気にかけている事はそこではない。 とある地域から、瞬間的ではあるものの『天使長』クラスと思われる魔力が感知された事。 魔術に携わる者であれば、この事態の深刻さは言葉にするまでもない。 これがロシアの件とどのような繋がりがあるかはわからないが、世界を揺るがす程の何かが起ころうとしているのは確かだ。 「で、『必要悪の教会』はどう動くんだ?」 「ロシアの件に関してはとりあえず静観するようです。ただちょっと気になる事があって…」 五和は一度言葉を切り、ここが重要だと言わんばかりに土御門の目を見て、 「件の膨大な魔力が学園都市に近づいているんです」 「何だと?」 「遠回りしながらではあるんですけどね。これに関してはイギリス清教も放ってはおけない…という事で私が派遣されてきたんですよ」 五和の話を聞き、土御門は右手を顎に添えて少し考える。 一体、それほどの魔力を誰が行使しているのか。一応、心当たりがないわけではないが、その可能性は先日『幻想殺し』の少年がゼロにしたばかりだ。 あらゆる可能性を検索しようとするが、頭の中にそれに該当するようなデータは見当たらない。 土御門は少し歯噛みした。そんな土御門の様子を見ていた五和が、 「わ、私なんかじゃ頼りないですよね…。そうですよね、女教皇様が来て下さった方がいいに決まってますよね…」 途端に小さくなっていく五和。そんな彼女を見て土御門が慌ててフォローを入れる。 「いんや、そんな事はないにゃー。聖人を退けた魔術師がいるのなら鬼に金棒だぜい」 「そ、そうですか…?」 うんうん、と頷いてとりあえず五和の病みモードを回避する。 五和は気を取り直して、少し大きめな胸の前で両手を組み、 「でも今回はバックアップも来ますよ。確かステイルさんとシェリーさんだったかな…。アックアの時よりは準備は格段にいいはずですよ」 天草式十字凄教、改め新生天草式十字凄教はイギリス清教の傘下にある組織だ。それは今も変わらない。 しかし、天草式には『聖人崩し』というジョーカーがある。その威力は魔術世界で五指に入るであろう「後方のアックア」を撃破した程だ。 そして、トップに君臨するのは世界に二十人といない聖人の一人である神裂火織。 普通の魔術師はおろか、聖人さえも打ち倒す組織。それが新生天草式十字凄教である。 その戦力は『必要悪の教会』をも凌ぐ。『騎士派』が再建状態にある現状ではイギリス清教最強の戦闘組織という事になる。『王室派』の切り札であるカーテナもほとんど機能しないので『王室派』は実質丸腰になっている。 その為、以前のようにトカゲの尻尾切りという扱いにはできないというわけだ。 もし、天草式がイギリス清教への待遇に不満を持ちクーデターでも起こしてしまえばそれこそ本当に国家転覆が起こってしまう。(当然、神裂を始めとした天草式の面々にそんな思いは微塵もないが) イギリス清教に属してはいるが、事実上『第四勢力』というのが魔術世界における今の新生天草式十字凄教の位置づけだ。 「とりあえず大まかな事情はわかった。俺はこれから色々と動かなきゃならないが五和はどうするんだ?」 「そうでした!私、上条さんにお話があったんだ!!」 五和はオロオロとしている。土御門はそんな彼女を見ておどけた顔で、 「たぶんまだ下の公園にいると思うぜい」 「わかりました!ありがとうございます!」 早口でそう言うと五和はあっという間に部屋から出て行った。 誰もいなくなった部屋で土御門はもう一回冷静になって考える。 魔術世界で桁外れの強さを持った者は何人か知っている。しかし、その猛者達が『天使長』にまで達しているかと問われればそんな事はない。 器が人間である限り、『天使』の力を行使する事など有り得ないはずだ。 だが、それが人間でなく『神にも等しい存在』だとしたら。 「まさか……」 土御門は脳裏に浮かんだ人物を即座に否定しようとするが、考えれば考えるほど合点がいく。 「クソッ…」 忌々しげに舌打ちすると部屋を出る。とんでもない事になった。と、戦慄しながら。 6 とある研究所が所々炎上している。 生体認証を始めとした九つのセキュリティを誇るエントランスゲートはバラバラにされ、警備していた者の手足にはコルク抜きが突き刺さっている。 スクランブルにでもなったのか、赤いランプと甲高いサイレンが鳴らされ、最新機械兵器の試作品らしきものが所内を徘徊している。 それらのセキュリティ全てを突破した2人は『管理部長室』という部屋にいた。 「まったく…何も殺さなくてもよかったんじゃないの?」 結標は呆れたように話す。 「しかし、万一逃げられでもしたら面倒ですし。それにこういった類の人間はすぐに沸いて出てきますからね。一人くらい消したところでどうもしませんよ」 対して海原はあっけらかんと返答する。 2人のすぐそばには、この部屋の管理者らしき男が心臓を打ち抜かれて転がっていた。 海原は男の白衣のポケットからUSBメモリを取り出す。 「持っているのはこれだけですか…。目当てのものと一致すればいいですが」 海原は言いながら結標にUSBメモリを手渡し、パソコンを含めたセキュリティの解除を頼む。 「それにしても、ここは何の研究所なんです?」 「『原石』よ。超秘密裏に行われてる研究みたいだから表向きには地図にも表記されてないみたいだけど」 結標はパソコンのセキュリティを解除し、手際よくUSBメモリのロックも解除していく。 「そもそも何の為に『原石』の研究をしていたんでしょうかね?」 「そればっかりは私にもね…。ただ、『原石』というのは私達とは全く別物なのよ。私達が研磨されたサファイアやルビーなら、彼らは稀に発掘される天然モノのダイアモンドと言ったところかしら」 「開発されずに発現する能力…つまり先天的に能力を有する者の仕組みを解明したかったというわけですか」 「先天的というのはちょっと違うわね。彼らは自然界である偶発的な要因が重なって発現するの。生まれた瞬間から能力を有しているわけではないわ」 結標は画面に出た警告文にも目もくれずにセキュリティ解除を進めていく。 「それに一口に能力と言っても私達みたいな一般的な能力とは全くベクトルが違うらしいわ。能力が特異すぎて超能力というカテゴリに分類していいのかすらわからないケースもあるらしいわよ」 らしい、という言葉をつけるという事は結標もそれ以上の詳しい事はわからないのだろう。 (学園都市の闇はまだまだ深いという事ですか…) 何やら一人物思いに耽っている海原を無視し、結標は話を続ける。 「やはり情報通り、ここに『残骸』の一部が運び込まれているわね」 セキュリティ解除の最中に拾ったのだろうか、ディスプレイの右下に新たなウィンドウが表示されている。そのウィンドウを見ながら結標は薄い笑いを浮かべる。 「やはり連中は別ルートで回収していたという訳ですか」 「どうやら『アイテム』が暗躍していたのは間違いないみたいね。当たりにしろ、外れにしろ重要な機密事項なのには変わりないと思うけど…」 海原は辺りをぐるっと見渡し、 「どうやら仰々しい情報が扱われているようですが、その割には警備がお粗末すぎませんか?これじゃどうぞ力づくで奪い取って下さいと言っているようなものですよ」 「別に面倒事がないのなら、それに越した事はないでしょ?…!出たわ」 結標が全てのロックを解除すると、画面には一つの文書データが出ていた。 「何かの実験データのようですね」 「大方、『原石』のものなんでしょうけど。それにしても凄いわ。能力開発のデータなんでしょうけど、全ての数値が通常とはかけ離れているわ」 結標は半ば感心しながら画面を下方向にスクロールさせていく。そして彼女の手が不意に止まる。そこにはこんな言葉が表示されていた。 『人造神界計画』―――被験者 『門番』 特久池栄光
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2719.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者 第3章 ③入院とこれから… いつもの病室で上条はベッドに横になりながら窓の外を眺めていた。 ベッドの隣では美琴が上条のために林檎の皮を剥いている。 カエル顔の医者は呆れた顔で上条に治療を施しながら、もっと自分を大切にしなさいと上条に注意を促した。 上条は困った顔で頷くものの、恐らくこれからも世話になり続けるだろうことを確信していた。 つい先ほどまで上条と美琴を見張るように黒子もいたのだが上条と美琴が放つ熱い空気に中てられ、 トボトボと病室を出て行ったのだった。 そして美琴と二人きりになった上条は窓の外から美琴に視線を戻すと問いかけるように言った。 「なあ、美琴?」 「どうかした?」 「俺ってこのままでいいのかな?」 「…」 「俺は何よりも美琴のことが大事だ。 でも何かあると必ずと言っていいほど首を突っ込んじまう。 今回も偶々怪我をするだけで済んだけど、これから先も無事ですむとは限らない。 少しは俺も美琴のために落ち着くべきなのかな?」 「…私はね、当麻が傍にいてくれなきゃ駄目になっちゃう。 重い女って思われちゃかもしれないけど、私にとっては当麻が全てなの。 当麻がもし居なくなったら生きていく自信がない。 当麻を危険に巻き込もうとしてるのに矛盾してるよね」 「…」 「当麻もそういう意味じゃ矛盾の中にいるんだと思う。 私が大事だって言っておきながら、私を残して危険な場所に行こうとするし… でも当麻には私にも自分にも嘘を吐いて欲しくない。 だって当麻が自分の信念に真っ直ぐ従ったお陰で、私は今ここにいるんだもん」 「…そうだな」 「だからね、どんなに辛くても当麻を止めることは私には出来ない。 その代わり必ず私のいる場所に帰ってきて」 「約束するよ、俺は美琴を一人にしない」 「…口だけじゃ駄目」 「そうだな」 上条は体を起こすと美琴の肩を両手で抱き寄せ唇を重ねる。 二人の口づけは約束の証… 絶対に守らなければならない約束がある時に唇を重ねるのが二人の恒例なっていた。 それはこの温もりを決して失わないための決意の現れでもある。 こうして二人は絆をさらに深めていくのだった。 そしてそんな二人の下に小さな乱入者が現れる。 「お姉さまもヒーローさんもラブラブ過ぎてまだ生まれたばかりのミサカには目の毒かもって、 ミサカはミサカはそう言いつつも興味津々と言った様子で覗いてみる」 上条と美琴が声のした方を見ると病室の入り口から打ち止めが顔を覗かせていた。 「あっ、ミサカネットワークを遮断するのを忘れてた。 うわー、祝福と嫉妬が混じった感情でネットワーク上が大変なことになってる!?」 そう言いながら両手をバタつかせてはしゃぐ打ち止めの頭にコツンと拳骨をする手があった。 「病院の中で走るなって言ってンだろォがよ。 それに上条とオリジナルの邪魔をするよォな真似しやがって」 打ち止めに拳骨を食らわしたのは一方通行だった。 もちろん反射は切ってある。 例え不意打ちの可能性があろうとも通常時は能力を切っておく。 それが一方通行なりの一つのけじめの着け方だった。 「また怪我しやがったンだってなァ。 流石ヒーローと言いてェところだが、てめェを心配する人間は山ほどいやがるンだァ。 少しは自重しやがれェ」 「サンキューな、心配してくれて」 「べ、別に俺が心配してるとは言ってねェだろォが!!」 「男のツンデレは見苦しいかもって、ミサカはミサカは苦言をあなたに呈してみる」 「誰がツンデレだ!?」 こうして見ていると一方通行も打ち止めも仲のいい兄妹にしか見えない。 しかしその関係は歪なものだ。 一万人ものクローンを殺した男とそのクローンの一人である少女。 二人の関係は言葉で表せるようなものではなかった。 「ったくアンタらは少し緊張感ってもんを持ちなさいよね。 …それで私が居る時にわざわざアンタが顔を出したってことは何か話があるのよね?」 「…あァ」 美琴の質問に対して一方通行は短めに返事をする。 「あのね、お姉さま。 ミサカは他の妹達より一足先に退院できることになったんだけど…」 「ええ、先生から聞いてるわ。 一緒に暮らすよう頼まれてるもの」 「ミサカはお姉さまとも一緒に暮らしたいんだけど… 出来れば、この人と一緒に暮らしたいの!!」 「…本気で言ってるのね?」 「うん」 「打ち止めは自分とコイツの関係を本当に分かってる?」 「ミサカもこの人がしたことが許されないことは分かってる。 でもヒーローさんが教えてくれたように、死んでいったミサカとミサカは別人なの。 そしてこのミサカを助けてくれたのは他でもないこの人で…」 「…そうね、死んでいった妹達と打ち止めは確かに別人。 例えミサカネットワークがあろうとも、あなた達は別々の…たった一つの命を持ってるの。 そのことがちゃんと分かってるなら私からは何も言わない。 だって打ち止めは私の可愛い妹だけど、私の所有物というわけじゃないもの。 自分の意思でコイツに助けてもらったことに感謝して支えてあげたいなら、打ち止めのしたいようにしなさい」 「お姉さま!!」 「俺は救いよォがねェ屑だ。 これから一生かけても妹達に頭を上げることは出来ねェだろォ… そして前にお前が言ったよォに、本当ォに謝らなきゃいけねェ相手はもォこの世にいねェ。 だけどアイツらに少しでも報いる方法ォがあるとすれば、今生きている妹達を守ってやるくらいしかねェと思ってる。 それにこのガキと共に暮らすってことは今の俺には許されねェくらい甘いことだってことも分かってるつもりだァ」 「確かにアンタにとっては甘すぎる選択だと思う。 正直どの面して言ってるのって感じよ。 だけどさっきも言ったけど私に打ち止めの気持ちを押さえつける権利はない。 …だから私がアンタに望むのは二つだけ。 アンタが殺した妹達…アンタの犯した罪から目を逸らさずに、前に進みなさい。 そしてアンタを慕ってくれている打ち止めを裏切るようなことだけは絶対にしない。 それだけよ」 一方通行は美琴の言葉に黙って頷く。 そうして一方通行は前に向かって一歩を踏み出した。 その一歩は一方通行にとってこれから先、決して揺らぐことがない確かなものなるのだった。 それから時は少し流れ学園都市では大覇星祭が開催された。 今の上条にとって初めての大覇星祭は恋人である美琴と過ごす思い出深いものになる。 上条家・御坂家、両家を巻き込んだ熱い体育祭が始まろうとしていた。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者
https://w.atwiki.jp/jinro-cat14d/pages/6.html
役職希望制かー。何希望しようかな? 14D猫に慣れてない人は進行役になる可能性のある役職はできれば避けたいところ。 またCOで吊りを逃れられない素村もあまりオススメはできません。吊り余裕ゼロですので。 狼=背>信=狐>占>狩 こんな感じでしょうか。左から順にオススメですよ。 占いは重要役職である割に、他配役とやることは同じですので比較的オススメな方には入ります。(希望者が多いので弾かれるのが関の山ですが) ちなみに管理者・とあるPLは14D猫に登場する役職を14D猫村ではこう見ています。 【村陣営】 村人…ある意味レア。狼よりレア。最大2人しかいないし。唯二のCOできない人なので、色々見えるけど特攻されて涙出る 占い師…村の生命線。こいついないと勝てない。欠けたら引分に甘んじます。銃殺出せやオラァ 霊能者…ボロ雑巾or胃痛。対抗が出ればロラ、共有第一なら指定役。不憫 狩人…場合によってはイケメン。でも狐噛みとGJ見分けつかないからビクビクしながら占いのストーカーをしている 共有者…相方第一だと胃痛だけど視点がわかりやすい。最近共有騙りで胃痛増加。指定が滅茶苦茶だと終了後怒られる。村の生命線その2 猫又…噛まれたいけどなかなか噛まれない。場合によっては指定役になれる 【狼陣営】 人狼…占い騙るとすっごくグレコンが面倒臭い。猫噛みたくない。勝つとキモチイイ 狂信者…ご主人がわかるので、狂人より動きに幅がある。潜伏狂信も割と多い。が、狂アピが足りないと噛まれる 【狐陣営】 妖狐…占いは信用勝負しないでくださいお願いします。普段なら特攻とかやり放題だけど、背徳いるから迷惑はかけられないしなぁ 背徳者…特攻?やれやれ!共有騙り?やれやれ!一番何してもアリだと思う。潜伏背もアリだと思います
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/3620.html
前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 第3部 第18話 第四章(3) 9月28日(月) 中部欧州標準時(夏)午後6時 パリ市中心部ホテルの会議場 午前9時から始まった会議は約60分の昼食をはさみ午後6時に終わった 私は基調演説と、最後のまとめの報告を行い、会議の成功を大々的 に出席者の前で謳った。 AIを使った無人兵器開発について米英仏独ロの開発状況と今後の学園都市の開発方針に ついて、質疑がなされる。各国を代表して6名の研究者が基調報告を行い、それについて 質疑応答がなされる。約200名の出席者は、最先端のAI兵器開発の進捗状況を熱く語っている。 それは、弾丸の飛び交わない戦場のような光景であり、自国の優位性を言葉と ホログラフと映像で示す場である。 だがその内実を知っている私から見ると茶番にしか見えない。 私はつい厳粛に会議のなされているにも関わらず笑いかける口元を抑える。 もともとすでにほぼ完全な、実戦で有人兵器を圧倒する無人兵器を開発済みの 学園都市、その兵器の開発側の私にとって、もっともらしく、最先端兵器に関する 開発状況を説明するふりをしながら、学園都市では1世代遅れの兵器をもっともらしく 説明する作業は、笑いをこらえながらの作業となる。 学園都市にとって基幹産業である兵器産業の優位性をアピールしながら。 橋にも棒にもかからない周回遅れの外部公開用のそれを、もっともらしく最先端のそれと 装いながら紹介する。 (まあ演技力も社会人の適性の構成要件ようね・・) 私も相応な社会的地位につき、「組織」という枠で部下も、守るべき組織も 持つようになると、ただ切った張ったで済まない。自分の苦手分野の「演技力」 を身に着けないといけない。 私は、会議を終え退出する出席者への挨拶を終え、会場に一人残る当麻の姿を確認する。 当麻と目でアイコンタクトを交わし、歩み出す 「当麻、退屈だった?」 「え」「いや・・そうでもなかった」 私は、当麻の理解力に驚きながら話を続ける。講演内容は、兵器を制御するAIと 演算内容に関する研究成果の話で、一般人にはちんぷんかんぷんなはずだ それに、会議はすべて英語で当麻には翻訳ソフト越しというハンデもある 「え・・でも結構専門用語多かったでしょう?」 「正直よくわからない言葉ばかりだった」 当麻がにこやかに笑顔を浮かべる 「だけど、美琴の一生懸命な姿を見るだけで退屈なんて吹っ飛んだよ」 「それに美琴の分かりやすい解説で内容がよくわかった」 私は当麻の心暖かい言葉に、心を揺り動かされる 一言感謝を伝える 「当麻・・ありがとう」 私は後援会の後で予定されている宴会に行くことを当麻へ促す。 私はしっかり腕を組み、当麻に体を密着させる 「じゃ・・行きましょう」 「ああ」 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 午後9時30分 ホテルのバンケットルーム 午後6時30分から始まった、会議の夕食会は午後9時に終わりバンケットルームは 私と当麻だけが残されている。 正直、スーツを着て、未成年なので酒は飲まなくて済むが、社交辞令と顔色をうかがいながら、 会話をにこやかにすること自体がかなりのストレスになる。 体力には自信があるが、欲と利害で接触をする軍需産業の要人と腹の探り合いをしながら にこやかに会話をするのはそれなりに緊張を強いられる。 しかも・・ 「ああつかれちゃった」 パーティドレスの裾を直しながら当麻に話かける 当麻の顔が少し怒りに満ちている。 「美琴は、忍耐強いな」 「え?」 「仕事とは言え、あんなセクハラに・・」 私が、大手軍需企業のCEOに馴れ馴れしく肉体接触を強要されそうになったことを 当麻が怒っている。当麻はすぐに私の手を引っ張り、助けてくれた 「ありがとう助かった」 「だけど・・なんで」 当麻が、不思議そうな顔をする。御坂美琴なら生体電流を操り感情くらいコントロールできるはずだと。 「うーん、断るのは簡単なんだけど、角は立てたくないのよね」 「年間数兆円の取引を学園都市と行っている企業のCEOだし・・」 私は溜息をつきながら話を続ける。 「あの社長はすけべ爺-さんだけど、政財界の要人に顔が効くのよ」 「だから・・」 私は、会議場の監視カメラの映像を見せる、そこにはCE0が丁寧な言葉ながら、嫌がる 私に執拗なボディタッチをしようとするシーンがはっきりと撮影されている 「なんかの役にたつかもしれない・・自衛手段よね・・外ではか弱い女を演じる私にとって」 私は乾いた笑いを作る。 「学園都市なら紫電一発で威嚇すればおしまいだけどね」 当麻が顔を引きつかせる、幻想殺しでも全方位からの飽和電撃攻撃は対処できないことを私は知っている。 「それは・・あんまりやらないほうがいいんじゃないか?」 私は、苦笑いを口元に浮かべる 「冗談よ、でも明日は・・」 私は突然決まった、協力都市での能力実演デモを思い浮かべる。珍獣みたさか? 怖い物みたさか、最初は予定にないのに、突然フランス政府の要望で組まれた 能力実演デモ。結局、どこへ行こうが私は学園都市の広告塔という立場から逃れることはできない。 (色物扱いは慣れているけど・・しょうがないわね) 当麻は少々怒ったように私に語り掛ける、14歳の少女に重要会議の議事進行を押し付け 夜は、セクハラまがいの接待をさせることにだ。 「人遣い荒いね・・学園都市も?」 「まあ、人権無視の旧暗部よりはいいでしょ」 「それに・・」 「まあ、せっかくフランスに来たんだからもう少しいろいろ行きたいじゃない モン・サン・ミシェルとか」 「ああそうだな」 「で、いつまでいれるんだ?」 「まあ明日デモやって、明後日の午後6時に帰国」 「そうか・・」 当麻の顔がぱあと明るくなるのが私にもうれしい。そして・・・ 「よし・・最高の婚約旅行にしよう」 さりげない一言が、セクハラや商談の疲れでささくれだった私の心を癒してくれる 私は、感動を抑え一言で返す 「ありがとう」 そして、2人でスイートルームの寝室へ向かう ・・・・・・・・・ 9月29日(火)正午前 フランス北部協力都市 パリからヘリで1時間ほどにて協力都市へ到着し、そこで午前10時から、始まった能力実演デモは 約60分で終え、清掃ロボットや駆動鎧破壊された無人機や、無人ヘリや、無人戦車が散乱している。 その前に模擬弾による疑似戦闘で有人機を圧倒した無人戦闘機。その性能が観客の 度肝を抜くとともに、その無人戦闘機を地べたから私が撃墜することで、いわば 2段階で観客を驚かせるという仕掛けだ。 (まったく・・本気でやれば秒殺なんだけどな・・) 本当は、マイクロ波やEMPで瞬殺するのは容易だが、それでは面白くないので 少し観客受けすることをやらないといけない。 最初は、数十人のスナイパーが乱射するライフル弾を磁力で防御するところから始め、駆動 鎧を投げ飛ばし、地面から数万トンの大量の砂鉄を巻き上げ、高さ100M以上の人型の巨人を 拵え、ヘリを叩き潰したり、人型の砂鉄から、砂鉄砲を放ち10KM先の戦闘機をぶっ壊す。 そのまるで怪獣映画のようなシーンに観客が沸き立つ。50両の無人戦車を磁力で止め、 ひっくり返し、砂鉄巨人で踏みつぶして戦車をぶっ壊す。 できるだけゆっくりやったつもりだったが完全武装の1ケ師団に相当する武装は1分ほど で無力化され、残骸に変わり果てる。 ひととおり観客に挨拶を終え、清掃中のフィールドに当麻が駆け寄ってくる 「美琴、お疲れ」 「まあ・・マイクロ波や赤外線レーザーでつぶすほうが簡単だけど・・」 「映像では意味わからないでしょう」 「美琴はそこまで考えているのか・・」 「まあこれでも一応学園都市の顔みたいなpositionだしね・・230万人のためにもね・・」 「加減は難しいのよ、一応1位だからしょぼくてもいけないし、かと言って外ですべての 手をさらけ出すわけにもいかない」 「だから外では基本は電撃と砂鉄と磁力しか使わないわけ」 私は苦笑いを浮かべる 「なるほど・・」 「私が電撃と磁場しか扱えないと思わせておけば・・」 「敵への対処がしやすくなるか・・」 「そう」 「じゃ・・そろそろいきましょう」 「モン・サン・ミシェルへ」 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 16時 モンサンミッシェル フランス北部の海岸沿いの協力都市から車で1時間世界遺産モンサンミッシェルへ到着する。モン・サン・ミシェルは8世紀、フランク王国時代に 大天使ミカエル(サン・ミシエル) がこの地に修道院を開けという夢を見たサン・オペールにより開設されたと伝えられる 島全体が修道院である世界遺産である。英仏海峡の要衝で英仏100年戦争時実際には 要塞として使用された。修道院とともに大砲が見ものの世界遺産である。 実際、周りを潮流の早い海に囲まれ、断崖絶壁の地形を利用した修道院は城として何度も 改修を重ね外観はむしろ要塞に見える。 元々は大天使ミカエルの巡礼地であったこの島は、1979年に世界遺産になっていらい 世界でも有数の観光地として知られる。 俺は仕事を終え、修道院や要塞の観光を終え終始ニコニコな美琴の 顔を見つめている 干潮で干上がった海の中野島と陸を結ぶ道路を2人で歩く。 今晩は島のホテルに泊まるのでゆっくりと島を味わう。 「まるで定番のフランス旅行コースね」 「天気もいいしな・・」 「それにしても・・」 「え?」 美琴はなんかの雰囲気に気が付いたみたいで少し口調が変わる 「なんでもない」 なんでもなさそうな美琴の口ぶりから容易ならざる事態を俺は感じ取る。 「また・・テロか?」 「ええ・・今回はなりふり構わないみたいよ」 「当麻・お客様よ」 どこから現れたのか、目に生気のない死体のような「人間」が 1000人ほど現れる 「美琴・・?」 「生体反応がほとんどない」 「え?」 「いや・・多分・・」 「誰かに遠隔操作されている」 「じゃ・・触れば解除できるのか?」 「理屈じゃそうだけど・・」 「え?」 「アレは・・ゾンビみたいな奴じゃないかしら」 「明らかに凶暴性を増しているし、それに・・」 ゾンビのような、人間は私と当麻へ噛みつこうと必死に飛んでくる。 人間離れした跳躍力で飛び跳ねてくる。それを高圧電流で撃ち落とすが、 回復力が増しているのか、あまり効果がないようだ。 一瞬で炭化させるのは簡単だが、これでも恐らくもとはまともな人間であった 事実がそれをためらわせる。 何秒か私は沈思したのち、脳を強力な電流でショックを与え、気絶させる選択を選ぶ 「しゃあない・・」 「多分・・意識を操作される術式とウイルスのようなものに感染していると思うわ・・」 「殺すのは簡単だけど・・」 「どうする?」 「まあ・・少し時間をかせぎしましょう」 美琴は、右手を操作し、地中から莫大な砂鉄を巻き上げる、その砂鉄が 磁化し、砂鉄をまぶせられたゾンビを地面を縛り詰める。さらに、砂鉄の鞭をからめ、1ケ所へかき集める。 「炭化させるのは・・簡単なんだけど・・だけど殺したくない」 美琴が苦笑いしながら、俺に語り掛ける。 それでも、生体電流を操作し、ゾンビの記憶を消せば終わる・・はずだった。 だが多数のヘリが状況をさらに悪化させる。バルカン砲が、ロケットランチャーが 俺たちを狙う。御坂美琴が、学園都市の顔が、外で全力をふるうことができず、市民 を殺す事ができないことに付け込んだ卑劣極まりない攻撃。 俺は、この攻撃を仕組んだ敵の狡猾さに歯ぎしりする。攻撃力では太刀打ちできない敵が 絡め手で襲ってくる。 「正直、私を殺す事はできないでしょう」 「だけど、このゾンビと・・当麻を守りながらヘリと戦うのはなかなか難しいわ・・」 「今一瞬でもゾンビの拘束を解けばゾンビが襲い掛かってくる 「生体電流を操れる私はともかく当麻にはウイルスの感染が予想されるからね・・」 「仕方がない」 俺は美琴が決意を固めたことに気が付く。 「美琴・・殺す気か?」 「通常の方法で倒れない奴は、再生速度を上回る速度で完全に炭化する意外に ないじゃない、それに復活できると思うわ」 「だけど・・・それではお前の手が汚れるかもしれない」 抜群の操作性と汎用力を誇る美琴の電撃でも、加減を誤ると完全に殺すかもしれない 美琴もゾンビ相手に絶対の確信などないだろう。加減だって普段よりはるかに困難だ。 「じゃ・・どうするの?」 「美琴・・俺の右腕を切断してくれないか・・」 「え?」 美琴の顔が驚きに包まれる・・ 「本当にいいの?」 「時間がない、すぐにやってくれ」 2秒ほど考え込んだ美琴は決意を固め、左腕を操作する。 右手でゾンビを封じ込め、頭から磁力と電撃で銃弾とミサイルを撃墜しながら、左腕を操作するという器用な事をしながら溶接ブレードを形成する 無音とともに質感を伴った美琴の溶接ブレードは、まったく痛みを感じさせることもなく あっさりと俺の腕を吹っ飛ばす。 そこから幻想殺しにブロックされた俺の真の力 八竜が現れる。 八竜・・あらゆる異能を食い尽くし、無に還元する謎の力。 俺は正直いまだにその力を使いこなすことはできない。だが・・美琴に俺を守るために その手を汚させるわけにはいかない。 考える必要もない、・・そして・・ 俺の右腕からあふれ出た力が轟音と閃光が辺りを包み、八竜がゾンビ1000体を包む・・ 刹那、異能でゾンビが発する異能を八竜が食らい尽くし、異能でゆがめられた空間から 発せられるエネルギーを吸収しつくす。 そして・・力を使い果たし俺はその場に倒れ果てる。 ・・・・・・・・・ 何分たったかわからない 俺は美琴に膝枕されていることに気が付く 俺が寝ている間に、事後処理はすんでいた。 美琴がヘリを磁力で無理やり着陸させ、事件を首謀した何者かは逃げたのか人払いの 術式は解除され、辺りは元の観光地の喧噪を取り戻す。フランス政府へ手を回し、 事件の後処理を終える。 表向きには何事もなかったように、すべてが収まる。 後から聞いた話だが、敵はロケットランチャーや、戦闘機を駆使し、戦争でも起こす構え だったらしい。 だが、そんなものが美琴に通用するはずもなく、一切の攻撃は、届く前に無効化され 世界遺産モン・サン・ミシェルと観光客に何らの被害も発生がない。 あれだけ猖獗を極めたゾンビと化した1000名は八竜の力で、術式を解除され、元に戻っている。 俺の右腕は何事もなく復活している。一体そこにどんな秘密があるのか俺も全く 理解してはいないが、美琴は大した驚くこともなく現実として受けて入れている。 その間に、学園都市の統括理事会事務局と初春飾利へ電話をしていた美琴が通話を終え、俺の元へ歩み寄る。 「ありがとう、助かったわ」 俺は、これだけの事態を何事もなく収拾する美琴の手腕に舌を巻きながら、当然の疑問を 口から発する。 「だけど・・このまま放置していいのか?」 「え?」 「美琴を暗殺しようとした奴の件」 「そうね・・やっぱり事件の首謀者には相応の罪が必要よね・・」 「とは言えここはフランス、私が簡単に動ける場所でもない、だからフランス政府 に事件解決をお願いしたけど、フランス政府に裁けるかしらね・・」 「え?それは」 「当麻・・あのおっさん覚えているわよね、セクハラ親父」 「え?」 「今回の事件は、私に大量殺人の疑惑をかけ、なおかつ十字教の 聖地モン・サン・ミシェルの破壊をイスラム原理主義者に着せる 一石二丁を狙っていた」 「は?・・」 俺は、事態の奇怪さに驚愕させられる。 「それは・・」 美琴が明るい顔で奇怪な話を始める。 「まあ事実は小説よりも奇だったわね・・」 美琴が軽口のようにとんでもないことを話始める 「今回の事件の背後に、イスラムと学園都市の排除を唱える、 イスラム原理主義の皮を被った十字教魔術集団と、それと結託した 軍産複合体がいる・・まあそんな話」 「はあ?・・」 「ようは、現代の十字軍を学園都市と中東へ起こそうとした・・そんな話よ」 「それて・・悪辣だな・・」 「私が・・イスラム原理主義と手を組む?ありえない。だけどそんなねつ造をするのが 十字教と、十字教よりのマスコミのフェイクニュースなのよ」 「まあ、でも・・売られた喧嘩を私は買う主義」 「どうせあの糞爺さんはたたけば埃がでるでしょう」 「いいのか?」 「本来外の世界の政治に絡むのは、ルール違反だけど・・私の名誉棄損し、当麻を殺そうとしたことは絶対許せない」 美琴の顔が精悍な表情に変わる。 「行きましょう・・私に大量殺人者のぬれぎぬを着せ自分の 都合で大量殺人をする奴に鉄槌を食らわせましょう」 「ああ」 久しぶりに見る、正義感の塊の美琴、その誰もが見惚れる笑顔を守るため 俺も立ち上がる 俺と美琴の周りの世界を守るため 続く 前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン)
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1951.html
とある少年の帰還記念祭 【本文】 第1話『目覚め』 ◆ 第2話『いざパーティ会場へ!』 ◆ 第3話『パーティ開始!』 ◆ 第4話『不幸な上条と幸せな美琴』 ◆ 第5話『プレゼントタイム』 ◆ 第6話『ウソとホント』 ◆|◆ 第7話『壮絶なるビンゴ大戦』 ◆|◆ 第8話『壮大なるビンゴ大戦』 ◆|◆ 第9話『走れ、上条』 ◆ 最終話『すべての真相』 ◆|◆|◆ 後日談 ◆ 番外編 第6.5話『病室は戦場』 ◆ 番外編 その2『出し物大会!』 ◆ 【著者】 ソーサ(14-457)氏 【初出】 2011/07/31 初投稿 2011/10/28 完 2011/10/31 番外編投稿 2011/11/07 番外編その2投稿 2011/11/24 後日談投稿
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1926.html
前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 番外編 上琴裁判~蘇る上琴~ 初春「これより、御坂美琴さんの法廷を開廷します。」 白井「弁護側、準備完了してますの。」 佐天「検察側、大丈夫だ。問題ない。」 御坂「え?え?なにこれこわい。」 初春「佐天検事、冒頭弁論をおねがいします。」 佐天「はい。被告人、御坂美琴は上条当麻という人物について何かを隠しています。それを暴きたい【いじりたい】と思います。」 初春「なるほど、隠し事は良くありませんね。では被告人、まずは上条さんとの関係を証言をしてください。」 証言【いいわけ】開始 御坂「さ、さっきも言ったじゃない。その…普通よ!普通。あのバカとは何度か会ったことがあるだけなんだから! それに毎回あたしの事スルーするし、いっつも女の子と一緒だし…そんな奴なんとも思ってないんだから!!」 初春「あくまでもただの知り合いという訳ですね。どうですか?弁護人。」 白井「…大体そんな感じですわね。わたくしもお姉さまもあの類人猿とはとくに親交が深いということはありませんの。」 《異議あり!!》 佐天「どーして二人とも嘘をつくんですか!『あのバカ』とか『類人猿』とか、それなりに親しくないと出てきませんよ。そんな単語! 白井さんも良いんですか!?気にならないんですか!?御坂さんが本当はどう思っているのかを!!」 白井「…わかりましたの。わたくしの知っていることをお話いたしますわ。」 御坂「折れるの早っ!黒子!アンタあたしの味方じゃないわけ!?」 白井「もちろん味方ですわよお姉さま。でもソレはソレ、コレはコレ。…わたくしも聞きたいことが山ほどありますの。」 佐天「じゃあ3対1になったところで続けましょう。裁判長!今度はお二人の出会い【なれそめ】についておねがいします!」 初春「わかりました。では被告人、証言を。」 御坂「うぅ…えーと、アイツと会ったのは6月の中旬くらいだったかな? あたしが何人かの男達に絡まれてるのを見て、助けようとしてくれたの。」 佐天「おお!まんま都市伝説の内容ですね!」 御坂「でもアイツあたしのこと子供扱いして、腹が立ったから絡んでた奴らと一緒に…まぁ…焼いたの。」 佐天・初春「「うわぁ…」」 御坂「でもアイツ全っ然ピンピンしてんの!傷どころか服も破けてないし。あ~も~ホントにムカつくわ!」 佐天「待った!…上条さんてLEVEL0でしたよね?どうやって御坂さんの電撃防いだんですか?」 御坂「わっかんない…けどなんかアイツ能力効かないのよ。それが許せなくて何度も勝負を挑んだんだけど結局勝てなくて… それだけ!だからアイツとはケンカ友達みたいなもので、二人が思ってるような関係じゃないの。だから…」 《異議あり!!ですの!》 白井「お姉さま!それだけの関係ならばお姉さま!なぜ逢引やらケータイのペア契約やらなさったのですか!? そのような事ほ、黒子に言っていただければいつでもかわりに…」 佐天「ちょちょちょちょ待ってください!!さらりと爆弾発言しましたよ今!!」 初春「あああ逢引って!もう本当は付き合ってるんですか!?どうなんですか御坂さん!」 御坂「…ふ……」 佐天・初春「ふ!?」 御坂「ふにゃあぁ~~~~~……………」 佐天・初春・白井「アビャビャビャビャ!!!!ぎにゅうあああ!!」 結局肝心なことは聞けなかった。まずはこの漏電【ふにゃあぁ~】を何とかしなければ。 だったら電撃を防げる上条さんがいればいんじゃね?上条さん側の話も聞けるし一石二鳥じゃね? そんなことを佐天は、薄れ行く意識の中思ったという… 前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/981.html
「う・・・う~ん」 窓から朝日が差し込む。蝉の鳴き声がうるさく聞こえる。ここは、常盤台学生寮にある救護室。 そのベッドの上で寝ているのは、成瀬台高校2年生界刺得世。 「こ、ここは・・・痛っ!」 まだ寝惚け気味な目を擦り起きようとする界刺は、頭に走った微かな痛みでもう一度ベッドに体を預ける。 「(この痛み・・・。そうだ、確かバカ形製へ贈り物を届けるために、常盤台の学生寮に向かって・・・不時着して・・・それ・・・)」 時折チクチクする頭で思考を纏めていた界刺が横を向いた瞬間、彼の思考がストップする。何故なら・・・ 「ス~・・・ス~・・・」 自分のベッドに腕と頭を預けながら寝ている少女―形製流麗―を目に映したからだ。彼女は界刺が目覚めたことに気付かず、穏やかに眠っている。 「(形製・・・)」 そういえばと界刺は思う。自分が意識を一時的に回復した際に、形製の耳に突き刺さるような叫び声を聞いた気がした。 もし、あれが自分の勘違いで無ければ・・・ 「(心配掛けちまったな・・・)」 この様子だと、自分が意識を失っている間はずっとここに居たんだろうと界刺は推測する。 頭の痛みも治まった界刺は体を起こし、眠っている形製へ己の手を運んで行く。 「悪かったな、形製。折角お前への贈り物を届けに来たってのによ・・・。心配掛けちまった」 界刺の大きな手が、形製の金色に染まった髪を撫でる。そして、その手を耳へ、頬へ移動する。 形製の頬には、まるで涙を流したかのような跡が残っていた。それに気が付いた界刺は、自身の不甲斐無さに少しだけ憤る。 「形製・・・。・・・・・・」 界刺は、形製の頬にできた跡をなぞり、その痕跡を消して行く。そして・・・気付く。 「・・・おい。お前・・・何時の間に起きてやがった?」 「・・・バレたか」 何時からか寝たふりをしていた形製が目を開ける。そして、自分の頬をなぞっていた界刺の手に自分の両手を重ねる。 「俺の『光学装飾』を舐めるなよ?」 「舐めてなんかいないよ。ちゃんと、バカ界刺の能力だけは認めているんだから」 「だけとは何だ、だけとは!」 「言葉通りの意味だよ、アホ界刺」 ベッドの上でくだらない言い争いを始めた界刺と形製。これが、この2人の日常。 「はぁ・・・。心配したんだよ?急に大きい音がして慌てて窓を開けてみたら、界刺が頭から血を流して倒れてるんだもん。 勢い余って窓から飛び降りちゃった。水楯さんのカバーが無かったらヤバかったかも」 「・・・相変わらずその前に出る性格は直って無ぇんだな」 「・・・みたいだね。これに関しては、返す言葉も無いよ」 形製は、未だ自分の体をベッドに預けたままである。界刺の手も自分の頬に寄せたまま、まるで少しでも長くこの状態を保ちたいという風にも見える。 「・・・そろそろ手を離せよ。何時までもお前の頬に触れたままってのは・・・」 「い~や。あたしを心配させた罰ゲームだよ。もうちょっと、このままの状態で居ること!前も思ったけど・・・バカ界刺の手って大きいよね」 「そりゃ、男だからな」 「そうだよね・・・。でも、意外にスベスベしてるんだよね、界刺の手。不動さんとトレーニングしてる割には。フフッ、ヤミツキになりそう」 「・・・猫かよ、お前」 「・・・かもね。ハァァ・・・。気持ちいいなぁ・・・界刺の手」 形製は、界刺の手を自分の頬に引っ付けたまま転がす。その感触が、形製を気持ちよくさせる。 そんな少女を見て、先程『光学装飾』で看破したある事実を総合的に判断して、界刺は心の底からの忠告を少女に与える。 「気持ちよくなるのは勝手だけどな。そろそろ離した方がお前のためだぞ、形製」 「何よ?また、アホ界刺お得意のペテン?へへ~んだ!あたしは騙されないよ!今は、界刺の手はあたしのものなんだから!ハァァ・・・」 「・・・そうか。なら、こう言ったらお前でも理解できるか?・・・俺の『光学装飾』を舐めるなよ?」 「ん?その言葉、さっきも聞いたよ?それがどうしたって・・・・・・」 事ここに至って、形製は界刺の言葉の意味を理解する。綻ばせていた表情は、一瞬として焦りの表情に変貌する。 そして形製は・・・ゆっくりと顔を後ろへ振り向ける。そこに居たのは・・・ 「ムフフ。ムフフフフ。やっぱりアタシの目に狂いは無かったようね・・・!!ムフフ」 「さすがは晴ちゃん。それにしても、形製先輩のあんな表情・・・初めて見た・・・」 「こんが彼氏と彼女のラブラブっちゅーヤツかい、月代?」 「そ、そんなこと聞かれても・・・男性と付き合ったことの無い私にはわかりませんです」 「あら、(自称)常識人の鉄鞘さんにもわからないことってあったのですね。世の中は不思議ですね~」 救護室の扉の隙間から界刺と形製のやり取りをこっそり見ていたのは、金束晴天、銀鈴希雨、銅街世津、鉄鞘月代、真珠院珊瑚の5名。 この内、金束、銀鈴、銅街、鉄鞘の4名を指して“常盤台バカルテット”と言う。 「き、君達!!!こ、これは・・・あの・・・その・・・」 「そんな所でコソコソ見てないで、こっちにおいでよ。誤解も解いておかないといけないしな」 先程までの自分の行動を見られていた形製がテンパる中、界刺は冷静に状況を見定めていた。 「ど、どうする!?彼氏さんの許可が出たけど、これって・・・形製先輩の交際を邪魔することにならないかな!?」 「だ、大丈夫なんじゃないかな!?な、何か私達も緊張してきた・・・!!」 「・・・いいから入って来な!!聞こえないの!?」 「「「「「は、はい!!!」」」」」 逡巡していた金束達に、界刺が強い言葉を向ける。その声を受けて、金束達が救護室の扉を明けて、界刺と形製の居るベッド前に来る。 「(希雨!ア、アンタから質問してよ!)」 「(そ、そんなこと言ったって!こ、ここはせっちゃんから!)」 「(な、ないごあたい?こ、こがんは常識ば詳しかろう月代が!)」 「(だ、だから、私はこういうのはサッパリ・・・)」 「形製先輩は、この殿方と健全なお付き合いをしていらっしゃいますの?」 「「「「ズバっと行ったー!!!」」」」 “常盤台バカルテット”の面々が中々切り出せない中、真珠院がズバッと核心を突いた。この恐れるものは何も無い的な性格は、さすがは生粋のお嬢様と言った所か。 「そ、それは・・・その・・・あの・・・」 形製は顔を真っ赤にして、しかし返答に詰まってしまう。それを、自分の質問の仕方が悪かったと判断した真珠院は、更なる追い討ちをかける。 「あら、質問の仕方を間違えてしまったのかしら?それでは・・・形製先輩はこの殿方の何処に見初められてお付き合いを始められたのですか?」 「見初め・・・!!え、えっと・・・あの・・・その・・・。・・・・・・///」 もはや、形製にはまともな言語機能を発揮できる思考能力が無い。真っ赤な顔を下に向けて、スカートの裾を指で摘まんで、モジモジするだけになってしまった。 「(あの反応・・・やっぱり!)」 「(みたいだね。形製先輩は、あの人が好きなんだよ)」 「(男子ば好きになっちゃると、あんの茹蛸ぽくなっちゃるのなー)」 「(わ、私も何時かはあんな風になるのかなぁ・・・です)」 “バカルテット”は、いよいよ自分達の推測に確信を持つ。これは、常盤台生徒間における大ニュース(異性編)である。 以前の『バカルテットは見た』は、普段の彼女達の行動から然程信憑性を持たれること無く、あくまで噂程度に生徒の間に流行した。 もちろん、当の形製が完全否定したため『バカルテットは見た』は何時もの法螺と断じられようとしていたのだ。 だが、目の前の光景は厳然たる事実。動かしようの無い現実である。これで、自分達の話を信じて貰える。そう確信固い金束達の耳に・・・ 「見初め・・・ね。そういや、あれってどっかの洋服店だったけ、形製?」 「えっ!!?み、見初めって・・・!!界刺・・・。君!!」 「(お次は彼氏さんだー!!)」 界刺の言葉が聞こえて来る。その言葉に形製がビクっと反応し、金束が更なる追加材料を得るために次の発言に耳を傾ける。 「確か・・・え~と・・・。あっ、そうそう。初めて形製と会ったのは、少しボロっちいファッション店でさ」 「うんうん」 「休みの日にそこへ偶々寄ったらさ、何とそこに形製も居たんだよ」 「うんうん。それで!?それで!?」 「そしたらさ、こんのバカ形製が俺のファッションを見て『絶対に有り得ない!!そんなクソダサい服装なんて、このあたしが絶対に許さない!!』とか言って来たからさ、 俺もカチンと来て大激論になったんだよ。あの時は1時間以上互いの持論をぶつけていたっけ?」 「成程、成程!それが、2人が交際する切欠になったんだよね!?」 界刺と形製の最初の出会い。その話を聞いた金束は、興奮そのままに核心について界刺にも質問を投げ掛ける。だが・・・ 「交際?俺が?このアホ形製と?んなことあるワケ無ぇじゃん」 「「「「えええええええぇぇぇっっ!!!??」」」」 界刺の口から出たのは、完全なる交際の否定。 「だ、だってさっき彼氏さん言ったよね!?見初めがどうのこうのって!?」 「うん、言ったよ。『初めて会う』って意味でしょ?ならさっきも言ったように、そのボロっちいファッション店なんだけど。何かおかしいことでも言ったかい、お嬢様達?」 金束達(+形製)が思っていた見初めとは、『一目で異性へ恋心を抱く』という意味である。 対して界刺の言う見初めとは、『初めて会う』という意味である。確かに、見初めという言葉には両者の意味が存在した。 「あら、そうでしたの?私、てっきりあなた様が形製先輩と交際しているとばかり考えていましたわ。これは、失礼致しました」 「いや、こちらこそ誤解の生むような真似を見せてすまなかった。 それに、付き合いっつってもバカ形製とは色んなことで助けられたり迷惑掛けられたりって関係なんだよ。・・・え~と」 「真珠院珊瑚と申します。以後お見知りおきを」 「俺は界刺得世だ。よろしく、珊瑚ちゃん」 「ちゃん・・・」 「ん?気に入らない?」 「いえ・・・今までそのように呼ばれたことは無かったもので・・・。では・・・よろしくお願い致します、得世様」 「おう、よろしく」 「あっ・・・。///」 「「「「「・・・・・・」」」」」 界刺が握手するために真珠院の手を取る。異性と触れ合う機会が無いのか、僅かに頬を赤く染めている真珠院の姿を見て、“バカルテット”(+形製)は呆気に取られる。 何だ、これは?何、この光景?一体全体どうしてこうなった? 「(な、何がどうなってるの!?何で形製先輩の次に、珊瑚の奴が顔を赤く染めてんのさ!?)」 「(わ、わかんないよ、晴ちゃん!!もしかして・・・あの人って女ったらしなんじゃあ・・・!?)」 「(女ったらし・・・。あんが・・・女の敵!!)」 「(で、でも!それじゃあ、形製先輩が可哀想過ぎです!!)」 「(・・・・・・)」 “バカルテット”が口々に界刺に対する印象や疑問を出す中、1人ほったらかし状態の形製は無言のままだ。恐ろしい程に静かである。そんな様々な空気が漂う救護室に・・・ 「あああぁぁ!!界刺様が!!界刺様が起きてますよ、苧環様!!」 「本当!?・・・・・・!!ハァ・・・よかった・・・!!」 「界刺さん!!意識が戻ったんですね!!何処か痛い所とか無いですか?」 「あっ。サニーに苧環。リンリンも。余計な心配を掛けちゃったみたいだね。もう大丈夫だよ」 月ノ宮、苧環、一厘が入って来る。いずれも、怪我を負った界刺の様子を見に来たようだ。 「界刺様!!本っ当に大丈夫ですか!?」 「うん、大丈夫。ありがと、サニー」 「界刺得世・・・。昨日は本当にごめんなさい。今回の件は、私にも責任があるわ」 「こんなの、俺がトチっただけだよ。そう気にすること無いって」 「そうは行かないわ!でないと、私の気が治まらない。だから・・・え~と・・・」 「ん?・・・リンリン、彼女は何を言いたいの?」 「苧環はお礼も兼ねて、今日この寮内で開催予定のパーティーに界刺さんを招待したいんですって!私も今日は風紀委員活動もお休みなので、参加する予定なんです」 「成程・・・。ん?そういや、何か腹が減ってるな。サニー、今何時?」 「今は午前7時15分です!!もうすぐ、寮の朝食の時間ですね!!寮監様の特別許可を頂いています!お体が大丈夫でしたら、界刺様も一緒に食堂へ行きましょう!!」 「えっ。そんなんアリ?」 「「「アリ」」」 「得世様。それでしたら、私が食堂への案内役を務めさせて頂きますわ。・・・個人的にあなた様とはもう少しお話をさせて頂きたいですし」 「そう?ありがと、珊瑚ちゃん」 「珊瑚・・・ちゃん?」 「界刺さん・・・。何時の間に・・・」 「わぁー!!もう、寮の人達と仲良くなってらっしゃるとは、さすがは界刺様!!そのフレンドリーさ、私も見習いたいです!!」 「「「「「・・・・・・」」」」」 界刺に群がる月ノ宮、苧環、一厘、真珠院を見て、“常盤台バカルテット”(+形製)は更に呆気にとられる。 何だ、これは!?何、この光景!?一体全体どうしてこうなった!? 「(な、何がどうなってるの!!?何で向日葵、苧環先輩、一厘先輩と次々にあの男へ群がってんの!!?ドサクサに紛れて珊瑚の奴もちゃっかり居るし!!)」 「(サ、サッパリわかんないよ、晴ちゃん!!!もしかして・・・あの人って極度の女ったらしなんじゃあ・・・!!?)」 「(極度の女ったらし・・・。あんが・・・常盤台(の生徒)の敵!!!)」 「(で、でも!それじゃあ、形製先輩が超可哀想過ぎです!!!)」 「(・・・・・・)」 “バカルテット”が口々に界刺に対する印象や疑問を更に出す中、1人ほったらかし状態の形製は無言のままだ。恐ろしい程に静かである。そして・・・遂に少女は動いた。 ガシッ!!! 「・・・・・・」 「グッ?け、形製!?く、苦しい・・・!!」 「け、形製さん!?」 「形製様!?な、何をしていらっしゃるんですか!?」 「ちょっと、形製!!彼は怪我人なのよ!!今すぐそんな馬鹿な真似を止めなさい!!」 「怪我人・・・?フッ。そんなことなら、あたしの方がずっと、ず~~~~っと重傷状態だよ!!!!!」 「グアッ!!痛い痛い!!」 界刺の頭を脇に掛けて締め上げる形製。所謂ヘッドロックである。ちなみに、自分の胸を界刺の頬に押し付けている意識は、今の形製には無い。 彼女は重傷状態なのだ。主に精神的な。 「あら、形製先輩って意外にはしたないんですのね。得世様と交際することが叶わなかったからと言って、そのような品位を欠く言動に及ぶのは慎むべきではありませんか?」 「き、君にそんなことを言われる筋合いは無いね!!君に、バカ界刺の何がわかるって言うんだい!?」 「あら、少なくとも今の形製先輩に比べればわかっていると思いますよ。得世様は、形製先輩のはしたない行動による被害を味わっている。違いますか?」 「君ぃ・・・!!!」 「あら、恐い恐い」 「いいから、その腕を早く離しなさい!!」 形製と真珠院の言い争いが続く中、苧環が界刺を絞めている形製の腕を無理矢理外した。ヘッドロックから解放された界刺は、痛む頭を抑えながら呻く。 「痛っ・・・。あぁ、苦しかった」 「界刺さん。大丈夫ですか?」 「あぁ。とりあえずは大丈夫だよ、リンちゃん・・・。ん~?」 心配する一厘の声に答える界刺の腹の音が小さく鳴る。本人しかわからないその音を感じて、界刺は中々に緊迫感溢れるこの場を収めるために提案をする。 「とりあえずさ、俺も腹が減ってるから早く食堂に行こうぜ。食事の時間とかってのも規則で決まってんだろ?常盤台の規則ってすごく厳しいって聞いてるけど?」 「あぁ!!もう20分を過ぎてる!!早く行かないと、寮監様に怒られますよ!!」 「もう、そんな時間か・・・。ありがとう、月ノ宮。さぁ、行くわよ!!」 「チッ・・・」 「フフ・・・」 「界刺さん・・・立てますか?」 「あぁ。問題無い」 「「「「・・・・・・」」」」 朝食の時間が差し迫っていることもあり、とりあえずはこの場を収めることに成功した界刺は靴を履いて立ち上がる。 そんな彼を中心に、形製、真珠院、一厘、月ノ宮、苧環が共に歩く。その光景に、“常盤台バカルテット”は戦慄する。 「(こ、これは・・・アタシ達の手で何とかしないと!!希雨!世津!月代!)」 「(うん!!このままだと、この寮の皆があの女ったらしの餌食になっちゃう!!)」 「(女の敵ば、このあたいが成敗しちゃる!!)」 「(私にできることは少ないかもしれないけど・・・皆のためなら私は頑張るです!!)」 “常盤台バカルテット”が女の敵として見做すは・・・界刺得世その人。これは、“常盤台バカルテット”が駆け抜けた、短くも長い壮絶極まる1日の始まりでもあった。 continue!!